本校の教育

中学校 校長挨拶

中学校 校長挨拶

校長 水上 勝義

筑波大学附属中学校は、明治5(1872)年、神田昌平黌跡に創設された師範学校(後の高等師範学校)に端を発し、明治21(1888)年、その高等師範学校に設置された尋常中学科(本校の創立)にまでさかのぼる、130年を超える長い歴史と伝統を誇る学校です。これまで何回かの合併や校名変更を繰り返して、昭和53年に筑波大学附属中学校と改称されました。
本校の校訓は、「強く、正しく、朗らかに」です。「強く」とは、「自主自律の精神」で自ら判断し強い意志とたくましい実践力をもって、目標に向かって努力する力を携えることを意味します。急激に移り変わる現代社会において、自分の周囲や世の中では予期しないことが突然起きることがあります。新型コロナ感染症の蔓延もその一つです。これまでの生活が一変し学校生活にも様々な制限が加わりました。そんな状況に直面しても自ら創意工夫しながら課題解決に取り組む力を育成することが重要と考えます。ただし課題の解決には、正しい知識を身につけ、広い視野に立ち、正しい判断力を発揮することが求められます。正しい知識や判断力をもたないと課題を前にしてどのように対処したらよいのか途方にくれてしまうでしょう。「正しく」にはそのような意味が込められています。

本校の授業は、生徒の知識習得とともに自らが積極的に自主的に学習に取り組む姿勢を重視しています。また、運動会や校外活動、宿泊を伴う海や山での共同生活などの行事、また道徳と特別活動を発展的に融合させたホームルームアワー(HRH)など様々な時間においても、生徒自ら決定し運営する自治が実践されています。例を挙げれば運動会の新しい種目の選定やルールづくり、校外活動の企画や運営などすべて生徒同士で相談しながら行っています。 また、自治活動を通して生徒は、人はそれぞれいろいろな考え方をもつことを理解します。そのうえで、他者への心配り、協調していくこと、明朗率直で誠実な態度の大切さなどを学びます。将来社会生活を送るうえで必要な集団生活における協力や責任を、中学生活で身につけていくのです。「朗らかに」はこのように人間性を高めるという意味も込められています。このような学校生活を通して、「調和的な心身の発達と確かな知性の育成、ならびに豊かな個性の伸長を図るとともに、民主的社会の一員として人生を主体的に開拓し、人類社会の進展に寄与することができる人間の育成」という教育目標を達成します。柔道の師でもあり教育者でもあり、本校の校長を25年近く務められた嘉納治五郎先生は「精力善用」、「自他共栄」という言葉を残しています。「精力善用」とは、自分の持っている力を世の中が良くなるために最大限に使うことであり、「自他共栄」とは、他人を敬い他人と信頼関係を築くことで自分も他人も栄えることを表しています。この嘉納治五郎先生の教えは現在まで引き継がれていると言えるでしょう。

本校は筑波大学の附属中学校であり、筑波大学の3つの拠点構想に沿って活動しています。1つ目の拠点構想は先導的な教育拠点構想です。我が国の教育をリードする研究と実践の推進を目指し、先進的で革新的な教育実践のため、教師は創意工夫あふれる教育活動を行っています。また、筑波大学における生徒の教育に関する研究に協力しています。2つ目の構想は、教師の教育拠点構想であり、教師は日々指導力の研鑽に励むとともに、教員研修や公開講座を行っています。3つ目の構想は国際教育拠点構想であり、生徒の国際化対応力の育成です。これまで海外への短期留学やホームステイも積極的に行い、国際交流の推進を図ってまいりました。グローバル化した現代社会および未来を切り開いていくためには国際感覚を身につけることは重要であり、今後も様々な形式で推進していきたいと考えています。

本校は長い歴史と伝統をもつ学校ですが、同時にこれまで述べてきたように先進的な試みにも力を入れています。伝統と先進性を融合した教育システムのもと、本校の生徒が充実した有意義な毎日を過ごし人間的に成長できるよう、私たち教職員一同全力で支援していく所存です。